青空に白い雲が流れるように

読んでくださるあなたに。小さな幸せを感じてほしい。そして私も、読んでくださることで、一人じゃない幸せを感じていたい。そんな思いで、あらゆる垣根を持たないて、好奇心のおもむくままに、手を走らせていたい。明日への小さな幸せを求めて。

熊谷守一展、国立近代美術館にて

f:id:happyengel:20180312234010j:image

 

これで決まった。

ダイナースクラブの会誌に、伊衆院静が、熊谷守一展に、二度足を運んだと、連載のエッセイに書いていた。

今回は、マイレージで飛行機が取れず、2泊にした東京での滞在。

帰る日は、飛行機が午後の4時。

いつもは、芝居が終わると慌てて空港に直行するのだけど、時間がある。

 

f:id:happyengel:20180312234056j:image

吉田さんの娘さんにお会いしたいと思っていたので、お電話して、と考えていたのだけど、

伊衆院静のエッセイで、熊谷守一展が開催中だと知って、行かずにはいられなかった。

ホテルは週末は、チェックアウトが1時なので、ゆっくりもできたけれど。

暖かいという予報だったので、中のダウンを抜いて出てきたら、寒い。

美術館は、人形町から、茅場町で乗り換えて、東西線で15分くらいだった。

 

 

入場料は1500円。割引はない。JAFを持っていれば100円引いてくれるが、家に置いてきた。

イヤフォーンガイド解説は、樹木希林と山崎努なので借りた。550円の贅沢。

 

f:id:happyengel:20180313001845j:image

 

 

若い頃の熊谷守一は、暗い中で蝋燭を灯して、自画像を描いている。

暗闇の中の光に映る人間を描こうと。

光は、やがて、赤の線で、輪郭を描くことに変化して行く。

熊谷は、裸婦をたくさん描いている。顔がない。

なぜ顔がないのかと聞かれて、愛着がわくからだと答えている。

顔と手足が漠然としていることで、裸婦の形が強調され、動きが生まれる。

熊谷の礫死、という絵は、ほとんど黒くて、輪郭がはっきりしない。

f:id:happyengel:20180312235645j:image

 

列車に飛び込んで死んだ女性を目撃した衝撃は、光と陰を追求する熊谷の生涯のテーマになった。

熊谷守一は、守一を探す長い旅の始まりにもなっている。

 

f:id:happyengel:20180312234715j:image

1928年に描いたひまわり

 

f:id:happyengel:20180312234827j:image

1957年に描いたひまわり

 

 

 

f:id:happyengel:20180312235755j:image

1931年に描いた、轢死を踏まえた作品と思われる、夜というタイトル。

 

 

熊谷の人生は、子供を幼くして無くし、家の没落、両親の早い死、極貧の生活の経験など、暗い闇を体験しながら、自然が人間の目にどう見えるかを探求し、色と色、音と色、形と色、光と陰影を、守一の目に見える形と線で、動的に描いている。

 

代表作の一枚、雨滴、は、水の音が聞こえてくるよう。

 

f:id:happyengel:20180312232902j:image

沢山の作品は、ほとんどが4号のサイズ。

聞かれて、熊谷は、家にある枠が4号だったから、と言っている。

4号の絵は、日本の狭い部屋に、最も見やすく、かけて安定しているように思う。

 

f:id:happyengel:20180312235954j:image

1959年の、噴水。

 

 

沢山出品されていて、二時間あればと思ってたけど、時間が足りない。

熊谷守一の絵は好きだという人が多い。

 

f:id:happyengel:20180313000432j:image1960年、鬼百合に揚羽蝶

 

 

海外でも、熊谷守一を高く評価する人が多い。

形の単純化で、色が生き、動きが出ている。赤の線が、中の色を浮かび上がらせもすれば、沈ませもする効果になっている。

熊谷守一は、同じ絵を何度も描きなおしている。時間を経て、絵が進化して行く。

f:id:happyengel:20180313000628j:image

白猫

 

f:id:happyengel:20180313000703j:image

眠り猫

 

f:id:happyengel:20180313000758j:image

次女が赤ちゃんを抱いている姿を捉えて描いた、

あかんぼを。1965年の作品

 

 

 

 

f:id:happyengel:20180313001122j:image1961年、雨乞いだな

 

f:id:happyengel:20180313001216j:image

1936年に描いた、雨乞い山

 

 

 

 

 

何度も描いていれば、そのうちにマシなものができて行く、と言う。

健康だった頃は、出かけて、自然を眺めて描いていたが、健康が心配されるようになると庭で、生物を観察しながら、絵を描いた。

かつて、出かけて描いた風景のスケッチを、トレーシングペーパーに移して、描きなおすという方法もとっている。

好きで絵を描いているのではありません。

石ころ一つ、紙くず一枚を見ていると飽きることがありません。

 

f:id:happyengel:20180313001347j:image

1967年、月夜

 

 

 

70半ばで病気になり、以後はほとんど庭で過ごした。

 

f:id:happyengel:20180313001547j:image

1960年、畳

f:id:happyengel:20180313001621j:image

1962年、畳の裸婦

 

 

 

 

自然のエネルギーが、熊谷を生きる喜びに誘い、沢山の試作に導いたのだろう。

熊谷守一展は、生きる喜び、というテーマが付いている。

猫が可愛い。さまざまな猫。一匹づつ違った個性を形と色と的確な線の運びで描いている。

簡素な生き方を楽しんだように、絵も簡素で美しい。