母のところに行くと、妹が先に来ていたよう。
サンタクロースのお人形と、ポインセチアが、
飾ってある。
動物達が、サンタさんを囲んでいる。
クリスマスの飾り付けが、母の部屋にも。
母は、ほとんど寝たきりなので、シーツ交換の時、
お風呂に入れてもらう時に、車椅子に移動する。
その時くらいしか、テーブルの上に飾ってあるものを見る機会はない。
ははの関心は、きっと別のところにあるので、気づかないだろうけれど、
部屋の中の、クリスマスは、暖かくて、なんとなく幸せを運んでいる。
最近は、母の耳がよく聞こえるようになったので、好きな音楽を聴いてもらっている。
母は、娘時代、会社のコーラス部に入っていた。
クラシックが好きで、音楽会によく、友人と行ったそう。
ピアノを買うために、貯金をしていた、年上の友人を誘って、コンサートに、コーヒーとケーキを食べに。
お金はいつも母が出していたという。
会社の帰りには、遠いところまで、甘いものを買いに行き、お土産に。
母が会社を辞めて、父と結婚することになった時、
祖母は、すっからかんの母に、
何にもならなかったわね、と言ったそうで、
その時、母は、しゅんとなって、ちょっぴり悲しかったと。
気前の良さは、ずっと変わらず。
人を喜ばせたいという思いばかりで生きてきた。
子供も、孫達も、母が大好き。
父は、世界中で一番の奥さんだと言っていた。
自分のことは、二の次、三の次で、
よく働き、怒った顔を見たことのない母。
よく笑い、可愛い人だと、誰からも慕われた母。
わたしは、そんな母の生き方が嫌いだった。
もっと自分を大事にしてほしいと不満だったし、
可愛い人というイメージにも反発した。
周りに、人を飲み込みそうな、強い女性を見ると、
それも嫌だった。
自分第一のわがままで、自己主張が強くて、人の気持ちをかまわない人も 嫌だと思う。
母は、ベッドの上で、静かに、今日を自然のままに生きている。
音楽に耳を傾けて、聴き入っている。
時々出る笑顔。
通りの悪くなった喉に、入れてもらう食事を、
一生懸命に、飲み込む努力を続けている。
顔艶は良くて、シワもなく、
肌も滑らかで、しっとりしている。
他の人達は、布団を開けると、粉がまうので、
マスクが外せない、と聞いた。
かさかさになってくるのが普通だとか。
職員の人達から、癒しだと言われ、
寝たきりになって今も、とても良く、おせわしてもらつている。
母の生きる力、だと言われるけれど、
職員の方の努力でもあると思う。
水分だけはしっかり取るようにしてください、
と、わたしは、お願いしてきた。
しっかり水分をとっているのと、持っていってるオイルや、救済水で、手入れしてもらっているので、
床ずれもしないし、肌はわたしよりも艶やか。
なんとか食べられるプリンが、いまは唯一の楽しみな味かも。
人を受け入れ、人を信頼して、人の気持ちを真っ先に考え、大切にしてきた母の生き方が、
素晴らしい生き方だったと。今頃になってわかる。
けど、わたしにはとても出来ない。
クリスマス。
イエスの誕生を祝うクリスマス。
人の幸せを願って、人々に愛を捧げて、
あらゆる人の苦しみを、一身に身に受けて、
人々に、全てを捧げて、罪人の身代わりに、十字架に、自らかけられたイエス。
赤いポインセチアに、真っ白な雪の聖夜。