六月の歌舞伎座、夜の部の最後は、一本刀土俵入り。
お蔦を演ずる、猿之助の演技が光る。
猿之助は、お蔦のような、堕ちた女の、捨て鉢なところがあつて、心にひたむきで、清潔な美しさを持った、突き放した優しさがある、気風の良い女性を演じと、猿之助てなければ出ない、形の美しさと、儚さ、色気が出る。
きっと、猿之助自身、この役はとても好きで、大事にしているのだと思う。
幸四郎の、茂兵衛は、お客を笑わそうとする演技が目立って、オーバー。若さと可愛らしさに欠ける。
夜の部の、二作目に、仁左衛門が主役を努め、御所五郎蔵を演じている。
仁左衛門は健在だ。
歌舞伎座の花であり続けている。
声も良く、形も美しい。
どこかの論評で、仁左衛門は、絵画的、情緒的な演技だと思う評していたが、まさに、姿形の、色気だだよう美しさ、耳に快く響く、声色の艶、そういうことだと思う。
隣にいた、老夫婦は、生粋の江戸っ子のようで、上方を基本とする、仁左衛門の演技は、お好みでないのかもしれない。もう一方に座っている男の人は、仁左衛門のファンのようで、激しい拍手。大人しそうな人だつたけど、最後に、松島屋、と声をかけていた。