歌舞伎座の四月は、仁左衛門が、通し狂言で、出ずっぱりの、絵本合法ガ辻。
仁左衛門は、お客様に、その役所で、満足の行く演技が難しくなると思ったら、その演技を封印してきた。
観るものから見れば、まだまだ観たいと思う。
油地獄は、体力的にもすごくきついお芝居なので、仁左衛門は、10年以上前に、一世一代として、封印している。
今回の、絵本合法に、一世一代を掲げた。
通し狂言は、出ずっぱりの演技になるので、観客は見応えがあって嬉しいけれど、仁左衛門の体力、気力から考えて、これっきりを決意したよう。
今夜は、その一世一代の、千秋楽。
色街の芸妓さんや、マダム、舞妓さんなどもたくさん観に来ていた。
着飾った着物姿の人が目立った。
絵本合法ガ辻は、仁左衛門が、町人の太兵次と、殿の大学の助、との、二人の悪人を、キャラクターの違いを見事に使い分けて、魅力的な悪役を演じている。
悪の華を咲かせる仁左衛門の演技は、魅力的な悪役を演じて、観客を惹きつける。
エロチシズムと、関西人が持つ、面白さを大事にしている。
面白おかしく、スマートで、魅力的な、悪の華が、仁左衛門でしか表現できない世界を持っている。
関東的に舞台が終わり、いつものように、仁左衛門と最後の出演者が、観客に、本日はこれで終了させていただきます、と挨拶。
幕が引かれてから、
観客は仁左衛門に惜しみない拍手を送る。
千秋楽の幕が閉じて、アンコールの拍手が続いた。
仁左衛門が、アンコールの膜を開けるのは観たことないので、ダメかなと思ったが、
あまりに長く続いて、ついにカーテンコールの幕が上がった。
仁左衛門も、感極まっていたに違いない。
観客も、これが最後の舞台を、カーテンコールで終わりたかった。
泣いている人もいた。
劇場の入り口で、仁左衛門の奥さんが、観客の顔を見ながら、感謝の心を表すかのように、頭を下げておられた。
わたしも会釈させてもらった。
娘さんの二人も、立ってあいさつされていた。
宝塚に入った長女の方と次女のかた。二人とも美人。
前から五番目のよく見える席を買っていたのに、前の人のあたまで、首を左右にまげて見ないと座っているときは見えない。
仁左衛門は、腰掛けていたら、立っていることが多いので、よく見えけど、オペラグラスを持っていけばよかった。
花道までは遠く、舞台も、松竹座のように近くない。
各席がゆったり前を向いて取っているので、五番目でも、微妙な表情までは見えない。
席の後ろに、ビデオをかけるスペースがとられて、
海外のひとは、英語で、セリフが翻訳されるので、
外国人の観客も多くなっている。
前席の二人の外国人は、一つ借りて、二人で見ながらお芝居を楽しんでいた。
このシステムか、大阪からでも、地方でもできるようになれば良いなあと思う。
三階席の人も、幕見席の人も、このビデオを借りて、お芝居を観ることができるので、沢山外国のフアンが増えている。