母が、誤嚥性肺炎を起こさずにいるのは、奇跡に近いと、ホームドクターは切り出した。
施設で、前から、リクライニングに変えて、食事の形態を、ソフトから、流動食に変えたいと言われていた。
その提案を再度、医者からしてもらおうというのがわかった。
リクライニングシートだと、喉に抵抗なく入るから、誤嚥を防げるという。
体力が弱ると、飲み込む力も弱つて、さらに誤嚥性肺炎になるからという。
私は疑問に思う。
今、母は、他の人と同じように、車椅子にすわつているので、お腹にも、喉にも筋肉運動ができている。手を使って新聞を畳み、手で食べる仕草を何回となく繰り返しているので、運動になっている。
だから、誤嚥にならずに、むせかけると、強い力で咳き込むことができる。
施設のマニュアル通りにすることを拒んで来たから、奇跡的という表現が使われる。
私は、何人かの入居者が、リクライニングになると、弱って、やがてなくなっていくのを見ている。
母の食事時間が長いのは、疲れさすと言うが、それが運動になっているので、食欲の衰えを防げていると私は思う。
施設の職員の食べさせ方に工夫があるのなら、それは、職員の勉強になるのだから、他の人にも、その技術は生きてくる。
リクライニングになったら、筋力がなおさらなくなり、誤嚥性肺炎の危険性が高まるということもあるのではないか。
寝たきりの人が、先日誤嚥性肺炎で亡くなった。
脳梗塞後、話すこともできるようになっていたとか。
ネットで調べたら、誤嚥性肺炎を見防ぐには、前かがみに首を向けて、食べさせるのが良いと書いている。
椅子の背中にクッションを入れて、前に体が傾くように。
反対しやないですか。
老人ホームは、死なせるのが目的じゃないかとさえ思える。
そうだろう。
五年で、返金のなくなるシステム。その後は、適当に亡くなってもらわなければ、回転が効かない。
部屋が空かないと、新しい入居者を入れられない。
出来るだけ、一人に手がかかる時間を少なくする方法が望ましい。
車椅子を使うと、仕事の効率が良くなる上に転倒事故の予防にもなる。
医者は、私が母を大事にして、愛しておられることがわかりました、と言った。
医者には、この施設を運営している企業の営利は関係ない。