懸念していた事が事実になった。
通い始めて3年近くなる歯科の院長が癌に侵されている事を告げられた。
名医との評判高く、初診は2年待ちという歯科医。
私も、2年待つで、ようやく治療を始めた。
インプラントの途中で、テンプレート療法。
2年余りの、長い治療法。上下各1センチのプラスチックの歯の上にかぶせるテンブレートをはめて、1日12時間。首筋から、背中にかけて左右対称に強制する治療法。毎回調整しながら、歪みを治す。2年余りでやっと解放されて、隙間を埋めたプラスチックを歯につけて、噛めるようになつた。それから、何ヶ月か。首も腰も全く痛まなくなった。
落ち着いて、安定したようなので、これから歯の治療に入ろうという日。
受付に、メッセージがテーブルに乗っていて、検査の結果、病状が判明しましたと書いている。
先生に聞いた。
悪いものが出来ている、とのこと。
癌ですか?治るのでしよう?
転移して、深刻な状態だと。
なんと言って励ましたら良いのか?
急に痩せられた。予約は月に一度、そのたびに痩せられたなと思っていた。
仕事熱心で、夜12時くらいまでいると言われていた。歯科医は、職人と似ている。
デンタルネットで、関西トップの名歯科医。治療は計画的にプランを組んで行う。
長い治療になるので、途中何があるかわからないという不安があった。
仕事が趣味みたいなものと言われ、仕事がすべてのような歯科医。
ハードな仕事を1人でされているので、身体を壊さないかと心配したから。
その懸念が現実になって、この先どうなるのか不安がつのる。
必ず元気になられます、と希望的観測を込めて励ましの言葉をさがしながら、目に涙が浮かぶ。
とても痩せてこられて、げっそりと弱々しく見えて、まだ若いから、なおのこと心配。
多くの患者を抱えて、休むことなくはたらき続けておられる。
新規の患者はとらないことは、医院のホームページに載っていた。
治療を始める前に見た程度で、ホームページを見ることはなかった。
4月から、新規の患者はとっておられなかったよう。
私の治療と、先生の命と、複雑な不安がつのる。