力の限り、生き抜いた母が、誕生日を迎えて、息を引き取った。
静かに旅だった。
美しい寝顔を残して。
目を開けたまま、昨夜から、亡くなる寸前まで。
静かに目を閉じた時、母は永遠の眠りについた。
夜中、椅子に座って、寝られなかった。
翌朝、温かいコーヒーをもらった。
食欲はなかったけれど、コーヒーが美味しくて、サンドイッチで、元気が出た。
お葬式か、結婚式がなければ、顔を合わすことのない親戚。
お葬式は、借りきりで、2日間。
家族葬の、千の風にお願いする。
母が亡くなって、わたしは、自分の役目は終わった。
生きている間に、後悔のないように、と思い続けて、母に寄り添い、母を支えてきて、後悔はない。
寂しいけれど、糸の切れた凧になった。
千の風で、打ち合わせが終わって、母の眠る部屋に戻ってきた。
すこしお化粧をしてもらつて、母は、ますます美しくなり、若くなった。
お母さん、と。いつものように自然と顔を覗く。
目を開けて、こちらを見てくれると思って。
だけど、母は、静かに微笑むように眠っている。