どじなわたしの、最高のうっかりミスは、クラコーの、アウシュビッツ博物館で起こった、いまでも震えがくる、体験。
クラコーから、2時間、バスに揺られて、アウシュビッツに行った時のこと。
入り口で、パンフレットを買った。
アウシュビッツの中を、一通り見て回って、さて、ランチ、口に入るかな、食べられないかな、と思いつつ、レストランに。
飲み物でも買うか、と、リュックサックの中の財布を出そうとしたら、ない。
中をかき回しても、ない。
盗られたかもしれない。
でも、こんなところで?
落としたのかも。
辿った道を、キョロキョロ財布が落ちてないかと歩き回り、なんでゴミ箱わあさつたのか、ゴミ箱も探した。
炎天下の夏の暑い日だった。
クラコーに帰れない。
博物館の中にある、警備室に行って、お金がない、なんとかならないかと訴えたけど、警察に電話してくれて、警察官がやってきた。受け付けては、くれたけど、それだけ。
バス代だけでもなんとかしなくては。
博物館の入り口に行き、買ったパンフレットを返したい、頼んだけど、それはできない、と頑なに断られて。泣きそうになっていたら、
後ろで、チケットを買うのに並んでいた人が、
バス代のお金を、出してくれた。
あの時の感謝は、今も。
身体中が踊り出すくらい、感極まって、嬉しかった。
アウシュビッツで、野宿を覚悟しないといけないかと、震えていた私。
ここは恐ろしすぎる。
ガス室に送られた人々の、靴の山。髪の毛の束、
閉じ込められていた、酷く、くらい小さな部屋。
ガス室に送られた、沢山の悲しい、絶望的な顔写真、
後ろにいたのはカップル。
バス代を、返すのに、住所と名前を聞いた。
絵葉書でも送ってもらえれば、と言われた。
バスに乗って、クラコーまで帰り着くと、電話で、クレジットカード会社に電話して、止めてもらった。まあ、これで一安心。
ホテルに帰り、部屋の中で、リュックサックの中を出して、また、なくなっていることを確かめた。
すると、どこに隠れてたのか、財布がボロンと出てきた。
盗られたのでも、落としたのでもない。
持っていたのだ。
止めてしまったクレジットカードは、使えない。
あんな恐ろしい思いしたことは、アウシュビッツだけ。
なんとかなるさ、というわけにはいかなかった。
今でも、あの時のあの思い、震える。