青空に白い雲が流れるように

読んでくださるあなたに。小さな幸せを感じてほしい。そして私も、読んでくださることで、一人じゃない幸せを感じていたい。そんな思いで、あらゆる垣根を持たないて、好奇心のおもむくままに、手を走らせていたい。明日への小さな幸せを求めて。

玉三郎の阿古屋

 

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南座の玉三郎特別舞踊公演は、昨日、楽を迎えたた。

わたしが観たのは、その前日。

三階席の2番目から。

南座の三階席は、断然おすすめ。

声がよく通る。音色が良い。小さくて、舞台に近いので、良く見える。

そして、値段が安い。

オペラグラスを使えば、細かい表情まで読み取れるし。

三階席の一番前は、もっと良いのだけど、ここは特等席で、まず最初に売れている。

2番目よりは、高くて、12000円もするので、二番目の、8000円はお値打ち。

今回観た阿古屋は、時に、浄瑠璃人形のように見えた箇所がいくつかあって。

阿古屋についての、解説を、玉三郎は、テレビで解説していたのだけど、阿古屋の文学性についての記憶が鮮明で、

なりそめから、別れまで、五分間の言葉で、表現できるのは、まさに文学的、詩の世界だと言っていたのが印象的だった。

三弦を弾く、玉三郎は、肩を動かさないで、遠くを見つめるように、出来るだけまばたきもせずに弾いている。

 

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お琴を弾く時は、景清を月にみなし、阿古屋を影に、長く響く、声で、歌いながら。

その後の、三味線から、浄瑠璃人形のように、肩が動かない。目は、どこかを見るというのではなくて、どこか、別の世界を見つめている。

玉三郎が、弾くのではなくて、人形浄瑠璃の阿古屋が、弾いている。

それだけに、心の内面がより表現されて。

最後の、胡弓になると、阿古屋は、次第に、胡弓の、むせび泣きながら、激しく、狂おしい音色に

、身を傾けて、景清のいない、虚しさ、狂おしさを、次第に、身を震わせるように弾いている。

今回の、阿古屋は、最高だった。

玉三郎は、役になりきっているか、乗り移った感じ。

、阿古屋と景清が、五条坂で知り合って、始めなければ終わらなし、という、時空を超えて、無限の世界に生きて、玉三郎の体を借りて、

今、南座の舞台で、二人の恋の美しい世界を、再現している。

 

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女型は、傾城を演じられるようになれば、最高だと言う、

傾城は、身を売る遊女ではあるが、城を傾けるほどの、というほど、美しさと、教養と、人間性を備え、誇り高く、愛する

たった一人の想い人のために、命をかけて、愛を貫く女性の、象徴だから、それを演じることができるということは、その演技者の修行も、同様にできていなければ、表現できないと、玉三郎は考えている。

美しくて、儚く、気高く、凛とした華のような存在。

傾城を演じるのは、女型役者冥利につきるということ。

南座で、今回、二人の傾城を演じた。

 

 

雪景色の中で、白の模様も控えめな純白に、赤が、計算された美しさで、配色した、衣装と、透明な傘の影になって、現れる傾城は、儚い美しさに満ちている。

肺病を患っているような、寂しさと弱さを秘めて。

赤の入れ方が実に見事。

美的世界を追求してやまない、玉三郎。幽玄に通ずる世界感を、この舞台でも、表現者として、最高の舞台で、観客に見せてくれている。