お天気がいいので、昨日も洗濯したのだけれど、冬物洗うものないかな。
2階に上がって、箪笥の中を整備し始めた。
衣服の断捨離は、少し。
箪笥の整理し始めて、麦わらの箱の中に、
わたしが大切にしているものが入っている。
この箱は、父が買ってくれた、数少ないものの一つ。
ずっと、納屋の箪笥の中の上段に入っていて、中を開けることが久しくなかつた。
大学で知り合った親友の、新婚旅行の写真、
結婚式の写真。新婚旅行に出かけて、送ってもらった、葉書が入っていた。
そして、もう一枚の葉書は、
矢張り、大学で仲良くなった友人が、クラブの合宿から、送ってもらったもの。
夙川の大邸宅に住んでいた人で、私達3人は。校庭の裏庭で、隠れタバコを吸って、おしゃべり。
彼女のお家に伺った時のことは、今でも、別世界の光景のように焼き付いている。
ダイニングで、紅茶とケーキをよばれた。
女中さんが、私たちが座っている横で、立ってて、
緊張していた。
素敵な、洋食器のカップ、銀のスプーンとフォーク。
これと同じものだった。以来、洋カップに憧れて、
久しぶりに、電話をくれた親友と、
学生時代、喫茶店で、ケーキを食べたという話に。ないわね、というので、
食事代で、余裕なかったでしょ。
食事は覚えてる。西北の商店街のうどん屋さんにはいって、
近所の天ぷら屋さんで買った、天麩羅乗せて食べたじゃん。
たこ焼き、お好み焼き。
親友は、おしゃれがしたいので。自分で洋服を縫って着ていた。
タイトスカートに、カーディガンを肩からかけて。
よく似合っていた。
豪邸に住んでいた友人は、ひと月のお小遣いが、私たちの10倍近い。
ブルーの絨毯を引き詰めた、お部屋の外で、ガラス拭きの職人さんか、雇い人か、わからない人が作業をしていた。
何台もの外車、働いている人の数も大きい。
恵まれた環境のはずだけど、精神的な不幸が、彼女の顔に、寂しげな美しさがあって、
お洋服のセンスもよく、背が高くてスタイルも良くて、わたしの憧れの女性。
大好きな人だった。
後に、聞いた話では、3度の結婚をして、
ある日突然。結婚を解消する、という潔さ。
惜しまれて。新しい人生に乗り出す、ということを繰り返して。
ある日、大学の死亡者名簿の中に、その人の名前があった。
後悔しない人生を駆け抜けた人。
美しいままで、散っていった人。
時々、わたしはその人のことを思い出す。
玉手箱のような、麦わらの箱の中に、
生き生きとした文体で、一時、幸せをいっぱいに、
ほとばしる思いを葉書の中に。
若い人が生きている。
親友の、幸せそうな写真を見ながら、
毎日のように、一緒だった、若い頃の思い出が、今のように蘇ってくる。
孫の世話をして。毎日忙しい生活を送っている親友が、連休の谷間、余裕のある時間ができて。久しぶり電話をかけてくれた。
わたしが、偶然に玉手箱を開けたのは、
何か大きな見えない力が働いているのかも知れない。
麦わらの箱は、父からもらった貴重な玉手箱。
父にもらった物が、それと同時に思い出される。
幸せな心と共に。