敬老の日なので、歩いて母に会いに行った。
なにをプレゼントすると言っても、花か、衣類か、食べられるものは限られる。
今治の柔らかいタオルに変えてあげようと思って、バスタオル、フェース、ハンド、など。
西宮北口の構内にある、モロゾフで、プリンを買い、電車を降りてから、近くにあるサーティワンで、アイスクリームを買った。
施設に着くと、車は、二台しか入ってない。
ちょうど昼食の時間。
母の食事は終わっていたので、持って行ったプリンを食べてもらった。
敬老の日なので、他の人には特別食の、松花堂。
隣に座っているひとは、ほとんど口をつけていない。
職員が食べさせないと食べない。勧めても、拒否したりして、根気よく食べさせる。おだてながら。無理強いすると、穏やかな顔が一変。
怒りをあらわに。
他の人たちは、黙々と食べている。
しばらく見ないので、亡くなられたのかもしれないと思う人が、入って来た。
痩せて、母よりもはるかに顔色が悪い。
松花堂を前に置かれて、ご飯を口に一口入れて、こんなもの、というように、お弁当をひっくり返し、お茶もお箸も、何もかも、放り投げた。
怒り狂って、ちゃぶ台をひっくり返すかのように。
母のところまで飛んで来た。
大丈夫ですか?
職員は、即座に散らばったものを拾い集め、テーブルを綺麗にしながら尋ねる。
コップとスプーンを並べなおし、食べられそうな鉢を並べると、身を乗り出すようにして、投げ出す。
こんな風に食べないから痩せて行くのだろう。
喚き散らす声は相変わらず、健在。
声は終始しゃべっているので、衰えるどころか。
わがままで、家族が閉口していると聞いていた。
母よりも早くから入居している。
わがままで、やりたい放題、悪態をついて、他の入居者を怯えさせていた。
そういうことから、他の人がいるところに置かないようにしていたのかも。
腕力もあり、喉も強いし、杖は持っているが、振り回して、足も衰えていなかつた。
金持ちのグルメだった人は、味にうるさくて、我慢できないのだ。
持ち込みのデザートらしきものを出してもらって、それは食べ、落ち着いた様子。
敬老の日でも、ほとんど訪問者のない入居者も多い。
近くに家族がいても、任せっきり。
金持ちの多い施設。
入れる人は幸せだ、なにもいうことない、と思う人が多い、外から見れば恵まれた老人ホーム。
入居者の家族と、施設の経営の、目指すところが一致しているのかと思うと、心が寒くなる。