松也、七之助、中車の3人の出演者で、夫の弟分助造と駆け落ちした妻おえんのふたりは、吹雪の中、小屋を見つけて入っている。夫の陰に怯えながら暮らしていているうちに、助造は病に。お天道様のバチが当たったのだと。
その小屋に、偶然、夫が吹雪の中、入れてくれとやつてくる。夫は、女房に未練な自分から、断ち切るために旅に出たので、二人のことをとっくにゆるしているという。喜ん二人を見て、怒りがムラムラと湧いて来て、すぐにここからでて行けという。ふたりは、この吹雪の中に出て行けば死ぬ。一旦でたもののたまらなくて、戻ってくる。夫は刀を持ってぬいて、二人を殺すという。
命を奪われようとした時に、二人は、命乞いに、相手に騙されたと言い合う。罵り合い争いを始める。
夫は、そういう人間の醜さに、自分もいやけがさし、そういうサガから、逃げ出した人間。
許す心が、二人を見ると、ムラムラと怒りが湧いてくる。
いがみ合う二人を見て笑い出し、吹雪の中に消えていく。
宇野信夫作、玉三郎演出。
35分の短い作品の中で、中車の演技が光る舞台。
七之助と松也も良かった。
玉三郎の美的感覚も素敵な舞台で私の好きな作品に仕上がっている。
寺子屋は、多くの役者が何度も手がけている。
仁左衛門と玉三郎の、松王丸と千代の舞台は、落ち着いた夫婦の風格があたた素晴らしいし、仁左衛門かわ、息子の孝太朗との夫婦役は、いま思い出しても、涙を誘う。気品と哀れさ、あやの愛情、子供への不憫さ、健気なさが見事に表現さらている。
勘九郎は、勘三郎の演技を見ているが、初役の松王丸。
わたしは、仁左衛門の松王丸が好きなので、元気の良い松王丸は、違和感が歪めない。
元気すぎる松王丸、見栄を切る松王丸、東男の、あっさりした、感情を表に表さない、きっぷの良さが命の関東。
病に伏して長く、髪も伸び放題で青白い松王丸だから、もう少し病人っぽく演じて欲しい所だけど、関東の役者さんは違う。
仁左衛門の松王丸は、名演技で定評がある。
家の中演技を引き継いでいく役者は、父や叔父さんなどを手本にして、継承していく。
七之助の、女房役は光っていた。